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  労働者文学作品集

詩     遺  言    磐城葦彦 

福島第一原発事故が起きてから
早や4年の歳月が 経とうとしているが
あの飯館村や周辺の集落は
そのかたちを失ったままだ

豊かだった筈の酪農家は
爆発して生じた高濃度の放射能が
風で 運ばれ 一瞬にして汚染地区と化した
野菜と共に 次から次へと
原乳が 出荷停止

大事に 大事に 搾乳してきた牛乳を捨て
飼育してきた牛たちも殺処分
辺り一面 計画的避難区域に指定された

ここから 退去してどこへ行けるか
移転を拒んだ102歳の長老 自ら命を絶った
移転先でやっていけない夫婦の妻 焼身自殺
牛を亡くした後 堆肥小屋で首をつった男

木壁に書かれたのは
「もはや 生きてはいけないから
殺された牛と一緒にとむらってほしい……」
との血ぬられた文字
それは死にいく言葉

捨てられた日々と
奪われてしまった日々の重なりに
いまだに 多くのひとびとが泣き崩れている

涙でもやった朽ちていく牛舎のむこう
免れることのできなかった苦しみのなかで
折れたこころをふるいたたせられるだろうか

ここに あるのは 遺言

(『労働者文学』第75号、2014)
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